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ハンガリーの聖ステファノ王証聖者  St. Stephanus Rex C.  記念日 8月 16


 諸聖人の中には王侯も数多見出されるが、わけても有名な一人にハンガリア王ステファノがある。
 王は980年の誕生であった。当時ハンガリーの住人はまだキリスト教を知らず西の方オーストリアやドイツに外征を試みなどしたが、933年及び955年の両回にわたり敗北を喫した。ハンガリーの国にようようキリスト教が伝来し始めたのはこの頃からで、まず国王ガイザ候も自ら聖教を信奉したけれど、それはまだ完全な信者と言い得ぬ程度であった。しかしその嗣子ワイエは極めて敬虔、かつ熱心な信者でハンガリーがキリスト教国となったのは実に彼のお陰に他ならない。そしてステファノとは即ちワイエの霊名なのである。父ガイザ候は997年に崩ぜられたが、臨終の枕許に国の重臣を集め、わが亡き後はワイエを国王と戴き、忠誠を尽くすように懇々と言い遺された。で、一同は感激して御言葉通りにする事を誓い、人間と共にステファノを新国王に奉戴したのであった。

 ステファノは既に幼少の時分から、その英資聖徳の片鱗を示した。彼の深い信仰は全国民に聖教を信奉させようと努力したその熱心にも窺われるが、又彼の忍耐、柔和、堅忍不抜等の諸徳を生み出したのもその信仰の力であった。加うるに彼はすこぶる教養も高く、殊に聖書は最も精励して研究したものであるという。
 しかるに間もなく、この聖人も剣をとって起たねばならぬような一大事が起こった。それは王のキリスト教弘布に対する熱心に反感を抱いた二、三の領主が反乱を企てたことである。ステファノはまず一心こめて祈り、わけても聖母マリア及び聖マルチノの取り次ぎを願い、それから出陣して堂々たる大勝利を獲得した。彼は敗軍の将士に対しても甚だ柔和寛大であった。そしてその後も数度干戈を執らねばならぬことがあったけれど、いつも隠忍自重して出来るだけ平和策を講ずることを忘れなかった。
 当時ドイツ皇帝ヘンリコ二世はステファノと親交があり。同様に信仰の厚い妹を有して居られた。それでステファノはその姫君ギゼラをわが妃にと貰い受け、共に励まし合って信心の業や修徳の道に精進し、また教会や修道院を建立したり貧民に数多の慈善を施したりした。
 ステファノはローマの教皇に交渉してハンガリー国内の教会組織を確立し、ストリゴニウムを大司教に、その配下には10人の司教を置き、それら聖職者の生活は自ら保証した。
 ステファノは実を言えばこの頃まだ国王という称号をもっていなかった。しかし教皇シルヴェストロ二世は彼の布教上の功労を思し召され、それに報いる意味で彼に国王の位と称号とを賜り、美麗な王冠を贈られた。この王冠は今なお存し、その後新国王の戴冠式毎に用いられ、国宝としてハンガリーの首府に珍重保存されている。そしてステファノは王となってから益々意を政治に注ぎ、その国はいよいよ栄え行くばかりであった。
 彼の特別の保護者は天主の聖母であった。王は聖母崇敬を全国に奨め、その被昇天の祝日を国祭日と定めた。
 ステファノは稜威赫々たる国王であったけれど、至って謙遜で、服装も質素に自ら貧民に施物を分け与えた程であった。ある時などは人に捕らえられて凌辱迫害されたことさえあったという。それでも王は少しも立腹せず却って無法な相手に謝罪したとの事である。また自ら柔和である王は、あらゆる人に他人に対し優しく親切にすることをすすめた。
 人間なかんずく聖人は誰でもがそうであるようにステファノ王も試練を免れることは出来なかった。前にも述べた通り王は平和を愛していたにも拘わらず、戦争をせねばならぬ事が三回あったが、それによって彼の王子はほとんど皆若くして戦死を遂げ残ったのは唯一人エメリコという太子だけであった。この人は徳高く聖なる生活を送り、天晴れ父の相続者として王位を恥ずかしめぬ者とステファノも常々大いなる期待をかけていたのであったが、何事ぞ、彼もまた父の崩御に先立つこと七年、1031年に亡くなった。その時のステファノ王の悲嘆はどれほどであったろう!ただ多少の心の慰めとなったのは、わが子の墓畔に奇蹟相次ぎ、人々の尊敬を集めたことである。このエメリコも今聖人の列に加えられている。
 ステファノ王は晩年国政を調えるのに専念した。やがて彼は重患を得て長い間臥床せねばならなかったが、よくその病苦を忍耐した。臨終の迫ったのを知ると、王は重臣司教等を、枕許に召し、その甥ペトロを位の継承者と定め、幾度も至聖なる童貞マリアの御名を呼んだ後、静かに瞑目した。時に1038年8月15日。あたかも聖母被昇天の大祝日のことであった。ハンガリーにおいては王に対する崇敬が今なお盛んに行われ、1938年にはその900年記念祭が賑々しく挙行された位である。

教訓

 ステファノに倣い、常に天主の聖母の御加護を願うがよい、そうすれば彼がその御扶助によってすべての敵を下した如く、我等も聖マリアの御助力を得て霊の敵に打ち勝つことが出来よう。